秋田県秋田市(穂積志市長)が生活保護の「障害者加算」を誤って過大に支給し、対象者に過支給分の返還を求めている問題について、弁護士の団体である自由法曹団秋田県支部(虻川高範支部長)が7日、再発防止策などを検討する第三者委員会の設置や過支給分の返還請求をしないことなどを求める申入書を秋田市側に提出した。
秋田市は1995年から28年にわたり、生活保護の「障害者加算」を過大に支給。精神障害者保健福祉手帳(精神障害者手帳)の2級以上をもつ少なくとも38世帯に対し、過去5年分の過支給額を返還するよう求めている。返還対象額は、最も多い世帯で140万円に上るとみられる。
申入書は3項目にわたっており①第三者委員会の設置②当事者に誤支給分の返還を求めないこと➂当事者全員に経過の説明と誠意ある謝罪をすること―を求めている。虻川支部長が秋田市広報広聴課を訪れ、申入書を手渡した。
第三者委員会の設置について、自由法曹団県支部は「誤支給がいつ、どのような原因で発生し継続してきたのか、県の監査や福祉事務所内での検査などでも是正されなかったのはなぜなのかなど、不明な点が多い」とした上で「秋田市の責任の解明も調査対象になるが、調査対象と担当者が同じでは十分な調査が期待できない。秋田市の担当部局での調査だけでは不十分であり、生活保護制度に詳しい専門家で構成された第三者委員会での調査と再発防止策の提言が必要だ」とし設置を求めた。
また行政のミスによって生じた過支給分の返還については近年、裁判や県知事への審査請求で「処分取り消し」となった例が複数あることに触れたほか、兵庫県明石市や愛知県豊橋市では自治体として返還請求をしないと明言した事例もあるとし「秋田市長が『当該世帯に寄り添った対応をして参ります』とコメントしたことが真意であれば、当事者に最低生活費を下回った生活を強いるような返還請求をしないことこそが『当該世帯に寄り添った対応』だ」と訴えた。
虻川支部長は「誤支給事件について速やかに調査し、回答し、当事者の方々の権利侵害がこれ以上起こらないようにしてほしい。もう十分、心労を受けている状況だ」と話している。