女性議員が増えない理由

〈読者の皆さへ〉
この記事には、女性議員が実際に受けたセクシュアルハラスメントやマタニティハラスメントの具体的な発言・文言(SNSや電話での発言を含む)を記載しています。お読みになる際はご留意いただき、過去の被害経験などにより心身に負担がかかる可能性のある方は、閲覧をお控えください。

 「SNSのメッセージで『いつ会えますか?』『ごはん行きましょう』と送られてきた」
 「夜中に電話がかかってきて『性行為をしましょう』と言われた」
 「子どもを産む予定があるなら選挙に出るべきではないという発言を受けた」
 「未婚であることや家族構成に結びつけたヤジが飛んだ」
 「女終わったと笑いながら言われた」

 これらは、秋田県内の女性議員の声の一部です。

 6月1日、秋田県女性議員ネットワーク(代表=加藤麻里県議)の総会が秋田県議会棟で開かれました。そこで、県内の女性議員が経験しているさまざまなハラスメントの実態が明らかになりました。

「なかったことにはしない」

 秋田県女性議員ネットワークは、女性の議員が少ないなど多様性に乏しい議会の現状を変えていこうと、県内の女性議員たちが2024年1月につくりました。

秋田県の女性議員は全体の1割
秋田県内の県議と市町村議員は合わせて446人。このうち女性の議員は57人と、全体の12.8%にとどまっています。秋田県女性議員ネットワークには現在34人の女性議員が参加しています。(数字はいずれも2026年5月末時点のものです) 

 秋田県女性議員ネットワークは2025年12月から2026年1月にかけて、県内の女性議員を対象にハラスメントに関するアンケートを行いました。

 きっかけは、一人の女性議員の声でした。

 「『選挙期間中に回った先の男性から、身体的接触、セクハラを受けた』という声が、ある女性の議員から届きました。ご本人といろいろ相談しながら、訴訟をするといったことではないけれど、でもやっぱりこのことを、なかったことにするのは違うよねという話をしました。その中で感じたのは、ほかの女性議員の皆さんも恐らく、同じような思いをして選挙をやってきたのではないかということです。そういう声を集めて、しっかりみんなで外に声を出していくのがいいのではないかという話をご本人ともしました。そこでまずは(女性議員ネットワークで)アンケートを取ってみようということになりました」(秋田県議の櫻田憂子さん) 

半数超がハラスメントを経験

 アンケートには、県内の女性議員59人(2025年12月時点)のうち、23人が回答しました。

 このうち半数以上にあたる12人が「ハラスメントと感じる言動を受けた経験がある」と答えました。

秋田県女性議員ネットワーク「ハラスメントアンケート」の結果を基に作成

 経験したハラスメントの内容は「パワー・ハラスメント」が10件、「セクシュアル・ハラスメント」が7件、「マタニティ・ハラスメント」が1件。

 行為者(ハラスメントを行った人)の最多は「男性の同僚議員」で、11件。
 「市民・有権者」から受けたという声も6件、寄せられました。
 「議会事務局・部局職員」(2件)、「女性の同僚議員」(2件)、「首長」(1件)からハラスメントを受けたという回答もありました。

秋田県女性議員ネットワーク「ハラスメントアンケート」の結果を基に作成

 被害に遭った場面・場所は「地域活動中」「議会」「選挙準備~選挙期間中」「議会外(視察・懇親会・地域行事など)」「会派・政党内・議会内会合」「SNS・メールなどオンライン」と、さまざまでした。

秋田県女性議員ネットワーク「ハラスメントアンケート」の結果を基に作成

「出産の予定があるなら選挙に出るな」

 実際、女性の議員たちはどのような被害に遭っているのでしょうか。アンケートの「自由記述」には、切実な声が記されていました。
(※下記の被害内容は、秋田県女性議員ネットワークが個人情報などを除いて要約したものです)

深夜に性的な電話がかかってきたことがあった。また「活動できなくしてやる」「次は落としてやる」と言われるなど、政治活動や選挙を意識した圧力を受けた

私に情報が入らないよう一部住民への働きかけが行われていた

髪を切った際に大勢の前で「新しい男でもできたのか」といった趣旨の発言をされるなど、私生活に踏み込む中傷を受けた

議員活動の中で、首長や関係者から「首長に反対するものではない」と大声で叱責されたり、「謝るまで議会を開かない」といった趣旨の発言を受けたりした。

セクシュアル・ハラスメントを指摘した際には、「逆に訴える」と言われるなど、声を上げること自体を萎縮させるような対応もあった

妊娠・出産・育児に関しても、「いつまで休むのか」「子どもを産む予定があるなら選挙に出るべきではない」といった発言や、体型の変化を揶揄する発言を受けた

議会で政策に関する一般質問を行った際、未婚であることや家族構成に結び付けたヤジが飛んだ。また、子育てや家庭生活について憶測に基づく発言をされたり、「家事をしていない」「子育てをしていない」と決めつけるような発言を受けたりした

委員長を務めていた際、他の委員長には行われない高圧的な叱責や能力を疑う発言を繰り返し受けた。議論の内容ではなく、私個人を標的にしたような言動が続き、周囲の職員からも「いじめではないか」と指摘される状況だった

女終わったと笑いながら言われた

委員会で質問をした際、「内容も分からず質問している」と聞こえるような発言を繰り返された。質問内容の指摘ではなく、議員としての能力そのものを否定されるような言動を受けた

議員控室では普通、一般的対応だが、それ以外は無視。役所のトップが、話し途中で威圧的な言動に変わった

「女は本など読むものじゃない」と男性議員から言われた

 「こうしたハラスメントは一度や二度ではなく、議員活動を通じて繰り返し受けてきた」とつづった女性議員もいました。

被害に「何もできなかった」

 アンケート結果に目を通しながら、私が深刻だと感じたのは「被害後」の状況です。

 アンケートによると、被害を受けた際の対応として「周囲に相談した」「注意・抗議した」「相談機関等に相談した」という回答が複数あった一方、「特に何もできなかった」という回答も5件、ありました。

 つまり、被害に遭う人の多くは声を上げること自体難しく、一人で背負っている可能性があるということです。

秋田県女性議員ネットワーク「ハラスメントアンケート」自由記述より抜粋

 アンケートの集計を担当した県議の佐藤光子さんは、次のように語ります。

 「議会の中だけでなく、普段の活動の中でも被害を受けているというところからも、皆さんが大変な思いをしていることがわかりました。かなり深刻なハラスメントを受けている人たちもいました。女性議員ネットワークに情報を共有してもらうことで、聞くこと、吐き出すことができる環境はあるかなと思っています。自分一人で抱え込まずに、まずは話してみるところで、このネットワークを活用していただければなというふうに思っています」

夜中に電話で「性行為をしましょう」

 この日、女性議員たちはグループにわかれて話し合いをしました。そこでは、SNSを介して行われる深刻なハラスメントの事例も語られました。

 ある女性議員の声です。

 「SNSのメッセージで『ご飯に行きましょう』とか『いつ会えますか?』というのが、とてつもない数、送られてきます。それをいちいち見たくなくて、 SNS もほんとうに開きたくないなと思いました」

 時には「性的な行為をしよう」という内容のメッセージも届きます。「女性を紹介してほしい」などと、議員活動とは無関係のメッセージが届くこともあります。「本当に、自分には何を言ってもいいと思われている」

 ある政策についてSNSで意見を表明した際には、引用された先で自分を侮辱する単語が書かれていました。

 「正直、議員になってからあまりにも、つらいことが多すぎて。もし(SNSで)『コメントを返さない』と言われたとしても、私は自分の気持ちの方が…これで続けられなくなってしまったら、議員として本当にやりたいこともできなくなるし、自分を守るためにもそういう(SNSへの)予防や対策は必要なんだと気づきました」

秋田県女性議員ネットワーク「ハラスメントアンケート」自由記述より抜粋

「子どもに何かあったら」

 別の女性議員は、夜中に電話をかけてきた見知らぬ相手から「性行為をしましょう」と言われました。このような電話は一度きりではなく、何度もかかってきたといいます。

 この女性の地域の議会では、全議員の住所と電話番号をホームページに公開してきました。

 「最初は、知らない番号からの電話にも出て、ちゃんと声を聞かなきゃいけない、議員になったんだからと思っていました」。面識のない人から突然「家を見てきたから」と言われたこともありました。

 この女性議員は、子どものことを考えて不安になりました。

 「家族に何か危害が及ぶことになったらと思うと、私は何のために議員をやっているんだろうって悩みました。もし子どもに何かあってからでは遅いと思って、ベテランの先輩に相談したら『それは市民の声だから受けるべきだ』と。自分はいいけど、子どもがすごく心配でと言ったら、ほかの議員さんたちが話し合いをしてくれて、住所は番地を除いて、電話番号は載せないという選択ができるようになりました」

 ただ、電話番号を空欄にしたのは、女性の議員だけでした。
 「今度は住民の方から、お前はやる気がない、ととても怒られて。『性的なことがあって子どもが心配で』と言ったら、ああそうなのかと、言ってくれました」

「私が女だからなのか?」

 別の女性議員は、次のような経験を語りました。

 「女性議員ネットワークの活動に対しても、すごく意見してくる人もいます。夜中や早朝に、私が出している議員レポートに対して一字一句ずつ、意見の電話をよこす男性もいます。相手が知っている人だけに、無視しにくいし(電話を)切ることができない。私が女だからなのか、他の人にもそうしているか、わからないけれど、そういうことをすごく感じる機会がある。それによって、自分の思っていることを曲げる必要は絶対ないなと思うけど、少しつらくなる時があります。自分の意見についてトーンを抑えざるを得なかったり、そういうのは男性にもあるのかな。でも曲げたくないですよね。だってそれで、議員になったんだから」

秋田県女性議員ネットワーク「ハラスメントアンケート」自由記述より抜粋

条例制定の動きにもつながる

 同僚の男性議員との関係について、事実ではない噂を立てられたという女性議員もいました。

 「たまたま同じ地域へ議員研修に出かけ、同じ講座になった、ただそれだけだったのに『一緒に行った』とか、本当にそういう噂を立てられました」

 この女性の地域の議会では、この事例が一つのきっかけになって、議会のハラスメント防止条例をつくる動きが生まれ、さらに自治体のハラスメント防止条例制定にもつながったといいます。

 「(条例が)抑止に結びつけばいいなと。相談窓口も設けられてはいますが、自治体がハラスメント防止条例をつくるということは、住民にとってもハラスメントのない地域を目指していくんだというメッセージになると思っています」

「これは対策の必要な構造の問題」

 この日は「女性議員のハラスメント相談センター」共同代表の濱田真里さんによる講演も行われました。濱田さんは、各地で起きているハラスメントの実態や対策を紹介。参加者はどうすればハラスメントをなくすことができるのか、考えました。

秋田県女性議員ネットワークの総会で講演する女性議員のハラスメント相談センター共同代表濱田真里さん

 秋田県内のアンケート結果について、濱田さんは質疑応答の中で次のように語りました。

 「本当にテンプレート(定型)のような事例で、被害がひどいのだなと正直思いました。秋田県は女性議員の数が全体の1割と少ない。女性議員数が少ないことの影響として『(ハラスメントを)言いやすくなる』というものがあります。今回の事例を見ていても、女性議員が少ないところではこういったわかりやすいハラスメントの事案が出てくるのかなと思いました」

 濱田さんは、秋田県女性議員ネットワークのような「つながり」の必要性にも言及しました。

 「このようなハラスメントは、女性議員という立場で受ける構造的なものであり、ちゃんとした対策が本当に必要だと思います。同時に、こうしたネットワークをつくってお互いにサポートし合う、同じ立場の人たちが協力してどんどん力をつけていく、ネットワークの存在自体が本当に重要であり、活動を続けてほしいなと思っています」(濱田さん)

このままでは多様な議員は増えない

 今回のアンケート結果を受けて、秋田県女性議員ネットワークは次のような対応策を挙げました。

議会横断的な相談先。記録様式を整え、議員本人だけが抱え込まない仕組みにする

議員・議会事務局・首長部局を対象に、具体事例を用いたハラスメント研修を定期化する

ガイドラインや条例の先行事例を研究し、各議会で導入しやすひな形を作成する

選挙・地域活動・オンライン上の被害も含め、女性議員が安全に活動できる環境づくりを継続的に発信する

 「議員の仕事は、まず住民の声を聞くこと」。このような言葉を、何人もの女性議員が語っていました。

 一方で「声を聞く」ことを丁寧にしようと思えば思うほど、ハラスメントの被害に遭いやすくなることも、女性議員の実体験から浮かび上がったように思います。

 さらに、選挙では「票を得る」ということが必要になります。理不尽なことをされても、ハラスメントを受けても「我慢しなければ」と考えてしまう状況に追い込まれやすい、という構造的な問題があると感じました。

 秋田県議会では現在、議員有志がハラスメント条例を発案するために、叩き台を練っているさなかです。

 ハラスメントは、あらゆる人に対して、あらゆる状況で起こり得ます。議会・行政にかかわる県内全域の被害に柔軟に対応できる条例を、秋田県でも模索してほしいと考えています。

 そのような条例のない状況では、女性や多様な属性の議員がこの秋田で増えていくことは、相当厳しいのではないかと感じます。

〈ハラスメント被害に関する相談窓口〉
・女性議員のハラスメント相談センター https://soudan-politician.studio.site/

【参考資料】
・女性議員のハラスメント相談センターhttps://soudan-politician.studio.site/
・大阪府内の地方議会における府民の政治参画の推進に関する条例https://www.pref.osaka.lg.jp/o170030/gikai_giji/kaikaku/seijisannkaku.html
・福岡県における議会関係ハラスメントを根絶するための条例https://www.gikai.pref.fukuoka.lg.jp/oshirase/harassment-jyourei.html
・狛江市職員のハラスメントの防止等に関する条例https://www.city.komae.tokyo.jp/index.cfm/49,94453,c,html/94453/20180629-150236.pdf

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